台東区浅草 〜蛇骨湯〜
今回伺うのは下町浅草のど真ん中、江戸時代から150年以上続く“超”老舗銭湯。
銭湯の屋号はほとんどの場合、地名か縁起の良い物から取る場合が多いが、ここはそうではない。
『蛇骨湯(じゃこつゆ)』という珍しい屋号の由来は、江戸時代にこの付近の職人が住んでいた蛇骨長屋という長屋があり、そこから付いた名前だとか。
つまり、時代劇や落語の中の世界、そんな時代からの銭湯なのだ。
江戸時代に強い憧れがある私は、数日前から楽しみで仕方がなかった。
そして当日、車で向かう。
休日の浅草とあって、とんでもない人の数。
あまりの人の多さの為、安全な少し離れた場所にあるコインパーキングに駐車。
そこから少し散歩しつつ、ゆっくり蛇骨湯に向かうことにする。
裏道の駐車場から通りに出て、信号を渡ればそこは雷門。
もちろん、記念写真を撮る観光客でごった返している。
目的は銭湯なのでどこの店にも入らず、仲見世〜六区通りをふらふらと歩く。
やっぱ浅草って、外国人観光客がかなり多い。
向かう蛇骨湯は、雷門からほんの5分程度。
繁華街の中にある上、地図を見ながらなので当然迷わずに到着する。
地図上では場所はわかっていたし、テレビやネットでも紹介されていたのを見ていたので外観なんかはわかっていたが、それでも想像を遥かに超えた立地。
わかりやすく言えば、商店街の裏の裏。
私が来た側とは反対の道には小さな看板があるようだが、観光客が何も知らずに歩いていても、絶対見つけることができないだろう。
建物は、なぜか隣の建物なんかに比べて小さく見える。
ぱっと見一階部分しか見えなく、なんとなく銭湯ぽくない。
雰囲気でいえば蕎麦屋のような、そんな感じ。
建物の隣にはコインランドリーがあり、無人ではあるが元気よく乾燥機が稼働していた。
到着したのが12時30分頃。
しかし、空いてるはずのシャッターが閉まっている。。。
当然、営業時間等は下調べをしてきたが、ここまで来てお休みとは。。。
しかしよく見ると自分の勘違いだと気付く。
開店時間が12時だと思っていたが、本当は13時だった。
開店までの30分間、店頭で開店を待つことを即決。
自分の勘違いではあるが、営業時間前に来たのだから、ここは一番風呂に入ろうじゃないか。
その日はよく晴れていたが、そこは裏道で日陰、おまけに冷たい風が吹き抜ける為すぐに身体が冷えてくる。
並び始めて10分ほど、通行人も通らない裏道で立ち尽くしていると、ついに次に並ぶ方登場。
自転車で乗りつけた常連さんと思われる女性は、40代前半位だろうか。
もうしばらくすると、ぞろぞろと並び始める。
前の方はいかにも常連の御婦人方。
一人で来ている方が多く、列に並ぶと途端に常連さん同士で会話が始まる。
少しずつ列は長くなり、開店直前になると20人以上が並んでいただろうか。
定刻になるとシャッターが開かれ、皆さん一斉に中へなだれ込む。
中に入ると、左手に券売機二台、右が下足箱になっていて、狭いながらもスロープになっていて、バリアフリーに対応している。
新しいタイプのロッカー風の下足箱に靴を入れて、鈴の付いた鍵を抜く。
この時、特に常連さんの女性陣は凄まじいスピードで中へと入って行った。
少し乗り遅れた感があったが、間違えないように券売機を眺める。
さすが浅草の超有名銭湯、券売機の説明書きが日本語、英語、韓国語、中国語と、なんと4カ国で書かれている。
サウナに入りたかったので、
『大人入浴料&サウナ&手ぶらセット800円』
を購入。
入浴料金の他にもレンタルのタオルや小物の販売等があり、手ぶらで来ても全て揃うようになっている。
券を買って中に入ると、すぐ正面がフロントになっていて、女性二人で手際よく対応してくれた。
渡された手ぶらセットはタオル、カミソリ、歯ブラシが手提げ袋に入っていて、濡れたタオルをそのまま持ち帰る事ができるようになっている。
お遍路のスタンプは後回しにして、急いで左手の男湯へ。
脱衣所はとても広く、全体的に木目で清潔感がある。
ここは全て鍵付きロッカー式になっていて、ある程度大きな荷物にも対応しているようだ。
その他脱衣所には洗濯機一台、血圧計、フットマッサージ等が備え付けられている。
サッと服を脱ぎ、手ぶらセットを手にいざ風呂場へ。
券売機やフロントで、もたもたしているうちに数人に追い抜かれ、風呂も先を越されたかと思っていたが、なんとか一番乗りで風呂場に入れた。
風呂場は脱衣所から入ると、正面に大きな大きな富士山のタイル絵。
左手に露天風呂と水風呂の出入り口があり、
左正面角から浅湯、マッサージ湯、電気風呂が並んでいる。
カランは左に4、鏡付きコンクリート製の島カランが6ずつ、右壁沿いに7、正面にも少し狭く見えたが3箇所ほど付いている。
雰囲気は、完全にスーパー銭湯。
まず先に身体によくかけ湯をする。
そして他には目もくれずに目の前の風呂へ入る。
よかった、思いがけず蛇骨湯の一番風呂に入れた。
直後から続々とお客さんが入ってくるのが見えたので、すぐに出て次のメインである露天風呂へ。
露天風呂もあまりゆっくりはせず、他の人が入ってくる前に一度出る。
ここ蛇骨湯は、『黒湯』と呼ばれる立派な温泉で有名である。
その上驚きなのが、各風呂はもちろん、水風呂も、カランから出るお湯もシャワーの水も、全て自家源泉の温泉なのである。
そのため洗面器にお湯を溜める時も、薄く茶色かかったお湯が出てくる。
島カランを陣取り、頭を洗い身体を洗い、髭を剃り、歯を磨く。
公衆浴場のカランから温泉が出てくるって、なんだか贅沢な気持ちだ。
身体を洗っているうちに、風呂場は一気に満員状態、中には外国人の方も。
やっぱり混む前に先に入っておいて良かった。
身体を洗い終え、改めて浅湯から入ろうとするも、満員。
マッサージ湯も、電気風呂も、満員。
ある程度身体が温まっているので、お湯には後でゆっくり浸かるとして、先にサウナへ。
サウナ室内は二段になっていて、7人位が定員位。
普通のドライサウナで、温度はちょうど100度。
こちらも中に入るとすでにほぼ満員。
少しつめてもらって座るも、こうも混んでると居心地が悪い。
公衆浴場にしては珍しく、サウナ室内にテレビが設置されていた。
程よく汗をかいたら水風呂へ。
露天風呂があるドアの向こうには、先ほど入った露天風呂の他に水風呂が設置されている。
正面に手すりがあり、丸椅子に座り少し休めるようにもなっている。
その手すりの先には岩山が造られていて、手すりの下には小さな池があり、そこには多くの鯉が泳いでいる。
このスペースは露天風呂というより、吹き抜けに屋根が付いているような感じで、雨が降っても心配なく入れるようだ。
左手にある水風呂の温度は14度と、熱くなった身体を一気に冷やしてくれる温度になっている。
もちろん、この水風呂も黒湯。
ここで少し黒湯の独特な匂いを感じた。
水風呂から出て椅子に座り、鯉を見ながら少し休憩。
なんかどこかの旅館に来たみたいだ。
いや、温泉旅館にも鯉を見ながら露天風呂ってなかなかないかも。
目の前にある露天風呂が空いてきたので、改めて入る。
温度は40度と、熱湯好きとしては少し物足りなさはあるが、ゆっくり浸かるにはちょうどいいのかも。
だから皆さん長々と浸かっていたのか。
少しして、内湯も余裕ができてきたので移動する。
内風呂は浅湯〜マッサージ湯〜電気風呂まで大きな1つの湯船になっていて、温度は42度と、誰でも入りやすい温度になっている。
さっき入らなかったマッサージ湯はスイッチ式で、押すと勢い良くジェットが出てくる。
隣の電気風呂はかなりの人気らしく、年配の方が次から次へと入りにくる。
ようやく入れたが、あまりの電流の強さに耐えられず一瞬にして出る。
今のところ、都内の電気風呂は全部入れないくらい電気が強い。
ゆっくり内湯に浸かりながら浴場内を見渡すと、さほど大きくはない銭湯だが本当にお客さんが多い。
外国人の方も何組かいるのを見ると、ガイドブックかなんかにも載ってるのかな?
風呂に一通り入ったら、立ちシャワーを浴びて風呂場を後にする。
入る時は気付かなかったが、フロント横には小さな待合スペースがあり、飲み物の販売もしている。
東京下町のど真ん中、憧れていた老舗銭湯を満喫。
次来るときは湯あがりに一杯、久しぶりに電気ブランで有名な神谷バーにでも行きたいな。
やっぱ浅草って街が大好きだ。
最後に、車に乗り込んで気付く。
やはり蛇骨湯の黒湯には独特の匂いがあり、自分の身体にその匂いがついていた。
それも、自分には少し苦手な匂い。。。
まぁいいや、それでもまた来よう。
今日も、いいお湯でした!!
アクセス度
雰囲気
清潔感
湯加減
また来たい度