鴨居 銀泉浴場

車で伺う。
この辺では唯一の銭湯。
昔はもちろんあったと思うが現在、浦賀、走水エリアに銭湯が無いのは意外だ。
立地はバス通りから少し入った所にあるが、こちらもその気が無ければまず見つけることはできないだろう。
大型ドラッグストアと新しいマンションに囲まれた場所にあり、開発された地域に取り残されたかのような場所にある。
暗くて見にくかったが、もしかしたら通り沿いから煙突が見えるかもしれない。
銭湯の前にはご主人の物と思われる軽トラがあり、その後ろには燃料に使う廃材の山。
目の前の月極駐車場に浴場利用者専用の場所が一台分用意されていたので、そこに駐車する。
建物の正面は隣の建物との間の路地のような軒下にあり、迷うことはないがちょっとわかりにくい。
写真に見えるのは正面向かって右側面、確認する前から確信していたが、もちろんこちらが男湯である。
建物そのものは古くからの銭湯のそれではなく見える。
看板も写真に写ってる小さなもので、入口には暖簾も無い。
軒下にはご主人の趣味と思われる植物が並び、あちこちにカエルの置物が置かれている。
手前の男湯の引き戸を開けると、目の前にご主人と思われる年配の男性が椅子に腰掛け、常連さんと笑顔で会話している。
番台、脱衣所はベーシックなタイプだが、こちらは番台は使用せず、番台の下の男湯寄りに椅子を用意して、そこに座っている。
銭湯巡りをしていると、番台に座らず番台の下に椅子を用意して座っている方が多い。
番台は少なからず目線より高く造られており、数段の踏み台を利用しなければ上がれない事が多い。
もしかしたら年配の方はそこに登るのがきついのではないだろうか。
男性が女性、女性が男性への配慮かと思っていたが、もしかしたらそうなのかもしれない。
番台下にある下足箱はもちろん木製の鍵。
下足箱の数は少なく、15足ほどしかない。
入浴料470円を支払い、脱衣所へ。
脱衣所にはロッカー、脱衣籠の両方が用意されている。
常連さんの荷物が棚いっぱいに並べられている。
昔の体重計、大きな鏡等が素晴らしい雰囲気を演出している。
ご主人と話していたのは先客のお二人。
内容が天気の話だったので、今も雪混じりで降ってますよと伝えると、50歳前後の身体の大きいスキンヘッドの男性はみんなに丁寧に挨拶をして銭湯を出て行く。もちろん私にも挨拶をしてくれた。
2月の雪混じりの極寒の雨の中、Tシャツ短パン頭に手ぬぐいを乗せ、傘もささずに笑いながら出て行く男性。
それをもう1人の方が笑いながら見送る。
凄い人だ。
服を脱いでいると、もう1人の先客の方が湯船の説明をしてくれた。
手前は我々が入ったから入りやすいが、奥はしばらく誰も入ってないから熱いだろう、おそらく50度はあるだろうから水をじゃんじゃん入れなさいと。
笑顔でお礼を言うが、50度と聞いて心穏やかではない。
ロッカーに鍵をかけたらいざ風呂場へ。
前代未聞、温度なんてどうでもいい、なんだこれ!?
あまりのインパクトに驚いた。
ビックリしたのは湯船。
なんと風呂場の中央にドンと君臨している。
湯船はU字になっていて、大きな手漕ぎボートのような形をしている。
関西の方に多い造りらしい。
正面の壁は見事な富士山のペンキ絵。
汚れや剥がれも無く、とても綺麗。
ペンキ絵の端に描いた日付が記されていて、2015年7月となっている。
今まで見た中で一番綺麗なペンキ絵だ。
左の壁にはタイル絵が貼られている。
左右の壁沿いにはカランが6ヶ所ずつ、計12ヶ所設置されている。
いつものケロリンと、大人には小さなサイズの椅子を持ち、ど真ん中のカランを陣取る。
ここにも他所とは違う点が。
なんとここにはシャワーが付いていない。
シャワーが無いので、全てカランからの給湯となっている。
皆さんご存知でしょうか、銭湯のカランを。
スーパー銭湯、日帰り温泉施設等は当たり前の様に【押す】を押すと一定量の決められた温度のお湯が出てくる。
銭湯は湯水別になっており、それぞれお湯は赤、水は青になっていて、お湯の赤いレバー?を押すと押しただけ出てきて、離すと止まる。
説明しにくいが、そんな感じ。
わからない方は調べてみてほしい。
銭湯によって違いはあるが、お湯は水とブレンドさせてからでないと身体にかけられないくらい熱い。
お湯を入れれば何キロもある洗面器を片手で持ち、片手で頭を洗うのは高齢者はきついだろうな〜なんて思いながら身体を洗い、湯船へ。
湯船は真ん中で仕切られており、奥側が深湯、手前が浅い風呂となっている。
両方共、左右両側から湯船へ入れるようになっており、湯船の内側には段差が設けられている。
まずは奥側の湯船へ。
言われた通り、温度計は50度を指している。
肌に突き刺すようなビリビリする熱いお湯はさすがに熱すぎるので、水を入れながら入ることに。
隣の湯はいくらかぬるめだったが、深湯の方が好きなのでこちらに入り続けた。
どちらとも気泡等は出ておらず、お湯も水中から熱い湯が出ている。
自分以外誰もいない風呂は最高だ。
長風呂はできないが熱い風呂に浸かると、出た時に心身共にリフレッシュできる。
風呂上がり、脱衣所には誰もいなかったのでご主人に話しかけてみた。
ご主人曰く、この形の湯船は神奈川ではここだけだそうだ。
その他、色々話をさせてもらった。
詳しい内容は伏せるが、銭湯について聞きたいことを全部聞けた。
話好きなご主人も話が止まらず、ずいぶん長い間話を聞かせてもらった。
銭湯を出る頃には軽く湯冷めしてしまっていた。
新しいとも綺麗ともいえないが、ここの風呂は一見の価値あり。
気になる方は是非。
今日もいいお湯でした!!

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湯加減   
また来たい度

横須賀市鴨居2丁目8−8